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  • 都市と農の共生をめざして~都市農地センター

福祉
食育・交流

区が保有する農地で、農福連携や農業体験の場を運営

取組の概要

■開設の経緯
 杉並区農福連携農園すぎのこ農園は、高齢者や障害者等の生きがいの創出・就労支援などに繋げることを目的に農園管理棟の完成を経て、令和3年4月に全面オープンした。
この農園は、杉並区が区民農園(宅地化農地)として区民に貸出してきたが、土地の所有者から売却の相談があった。区では、減り続ける都市農地の有効活用について、以前から検討してきた経緯があり、その活用のひとつとして農福連携事業を考えていた。
 当該地は区の北部に位置する整形地であり、近隣環境、最寄り駅や幹線道路からのアクセス等も良く、農福連携農園の適地として判断した。そして農地法第3条の許可により、平成31年3月に土地を取得し、4月から農園運営の試験的運用を開始した。
 事業実施にあたっては、庁内の農業、障害者、高齢者、保育、建築、企画の各部門をメンバーとする横断的な検討会を立ち上げ、障害者団体等の意見も聴取しながら、令和元年6月に「杉並区農福連携事業基本計画」を策定し、事業を行うこととなった。

■施設の概要
 全体面積は約3,200㎡、JA東京中央に農園管理と利用者への農業指導などを委託している。
 その土地利用区分は以下のとおりである。
① 団体農園区画(団体貸出エリア 約600㎡)
 障害者施設、就労支援センター、就労継続支援B型事業所、保育園などの6団体に区画の貸出をしている。利用時には付き添いの職員の同行が必要とされているが、JAによる作付け計画などの支援を受けながら利用している。
 収穫物は各団体において、各施設の給食等の食材として利用されている。
② 多目的農園区画(約2,000㎡)
 社会参画の一環として公募した区民ボランティア(現在28名)に農業体験の場を提供するとともに、高品質な農産物を生産し、障害者施設等への提供を通じて施設の運営支援を図ることを目的に運営している。区民ボランティアは、JA職員(3名)からの農業指導の下、農作物の栽培や圃場管理などの活動を行っている。ボランティア活動は各人の都合にあわせ無理がないように実施している。
 福祉施設等に提供する農産物は、新鮮な状態で提供しており、地産地消の推進の役割も担っている。
そのほかに、夏と秋に行われる区民向けイベントとして収穫体験なども行い、広く区民に農園の周知を図る取組も実施している。また、障害者の職場実習の場として受入れを実施している。(現在4名)
③ 管理棟区画(約600㎡)
かつての杉並の農の原風景を再現するため、寄贈された江戸時代中期から約300年続いたとされる上井草の農家住宅の部材(柱や梁)を活用し、農園の管理棟を整備した。
管理棟内には、昔の農機具なども展示し、区民に一般公開するとともに、区民ボランティアの休憩場所や研修会のほか、食育ボランティア養成講座など区民を対象とした事業など区民・地域と連携した取組等に利用している。

■今後の展望
 今後は、福祉との連携を一層図るため、障害者の職場実習などの就労支援を強化するとともに、管理棟を活用したカフェやマルシェなど障害者団体と連携して事業を拡充させていく。
また、子ども食堂のほか食育や食品ロスに関する講座など、区民・地域と連携した事業の拡充を図っていく。

外観

管理棟と倉庫棟・多目的農園区画

管理棟内部

作業風景

耕作地確保・営農主体など

 本地区では、宅地化農地であった農地を区が農地法第3条の許可を得て農地のままでの所有権を保有し、農業担当課(産業振興センター都市農業係)と他の部署と連携しながら運営している。そして、多目的農園区画は自ら公共的事業(区民の農業体験の場の提供など)を行い、団体農園区画(団体貸出ゾーン)は杉並区特定農地貸付規程に基づく農園として障害者等の団体に提供している。

 生産緑地の買取を行っている多くの自治体が、先ず土地開発公社が取得し、届け出により農地転用し、都市公園や条例による新しい市民利用施設として利用しているのに対し、本事例は宅地化農地ではあるが、自治体が農地のままで所有、利用を継続するという方法をとっており、自治体による今後の農地保全のあり方として注目される。

都市農業の機能発揮

評価ポイント!

①自治体の役割
 都市農地を保全し安定的な機能発揮を図るうえで、自治体の役割が重要となっているが、本地区は農地法等の枠組みの中で、自ら農地を保有し、一部について特定農地貸付法による転貸スキームを適用することにより多様なニーズに応えた農福連携事業を実施している先駆的な事例である。

②関係課の協力体制
 庁内関係課の参加により「杉並区農福連携事業基本計画」を策定し、それに基づいて事業を実施していることから、部局間連携の不可欠な団体貸出エリアの運営、多目的農園エリアの作物の提供・障害者の職業訓練の実施を円滑に行うことができている。 

団体概要

団体名杉並区産業振興センター(都市農業係)
活動地域東京都杉並区
問い合わせ杉並区産業振興センター都市農業係
  電話 03-5347-9136
  〒167-0043 杉並区上荻1-2-1 Daiwa荻窪タワー2階
ホームページ杉並区:施設案内:農福連携農園すぎのこ農園