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  • 都市と農の共生をめざして~都市農地センター

地産地消

食と農をつなぐまちづくり

  ・食と農の連携による地産地消の推進と地域活性化

取組の概要

 愛知県津島市は名古屋市から西に16kmほどの位置にあり、古くから津島神社の門前町として栄え、「尾張の台所」とも呼ばれた歴史と文化、自然に恵まれた人口62,000人余の都市である。市内では600haほどの農地で稲作を中心とした農業が営まれているが、農家人口の減少と高齢化によって、特に市街化区域内農地の遊休地化が顕著になっている。

 この津島市で平成28年に策定された「津島市まち・ひと・しごと創生総合戦略」に基いて3ヵ年にわたり実施されたのが「伝統の食と農でつなぐ人と地域にやさしいまちづくり事業」、通称「みんパタプロジェクト」である。

 「みんパタ(=みんなの畑)」をキャッチフレーズに取組まれてきたこのプロジェクトは、市民が地域の伝統の食と農に関心を持ち、その知識を高めることで豊かな食生活を実現するとともに、来訪者を地域の食でもてなし賑わいを創出することを目指している。同時に都市農地(市街化区域内農地)の維持管理と有効利用を検討することにつながるものでもある。

 このプロジェクトの推進にあたっては、地元JAや商工会、生協など団体の代表と学識者によって構成される「伝統の食と農のまちづくり推進協議会」が組織され、その下部には農や食の現場に携わるメンバーによる「農部会」「食部会」を置き、そこでプロジェクトのコンセプトから実施内容までが検討・協議されてきた。
以下、このプロジェクトで実施された「食」と「農」の取組みとその連携について、簡単に紹介する。

1-1 農の拠点整備:「農縁」
 市街化区域内農地を活用した「農縁」は、農業によって人と人や食と農をつなぐ場として設定する農場で、遊休地化が顕著な市街化区域内農地の活用と合わせて整備が検討された。

 平成29年度の取組みで約1,200m2の農地を選定し、後述する「みんパタカフェ」の食材生産のための圃場と、サービス付市民農園を想定した整備を進めた。平成30年度には、ここで試験的に野菜類の栽培を開始、土壌の状態等を確認しながら適切な作目やその栽培計画を検討したほか、将来的な福祉との連携も視野に入れたレイズドベッドの採用や、「みんパタカフェ」への食材供給を補完するための市内生産者との連携検討などを行っている。

 今後は、今般施行された都市農地(生産緑地)の貸借円滑化法を活用した新たな「農縁」整備の可能性も含め、市街化区域内農地の有効利用に資するものとして、市当局とも情報交換を進めながら「農縁」の普及に努めていくものである。

1-2 農の担い手づくり:「農業塾」
 「農業塾」は、市民が農業に関心を持ち、やがては自立した生産者として「農縁」の担い手となり得るような知識や農業技術を身に付ける場として企画された。また、「農」と「食」を通じて「いのち」を学ぶ食農教育の場として、みんパタプロジェクトの先導的な役割をも担っている。この「津島農縁塾みんパタ」は、市郊外の市街化調整区域内で約30区画の体験農園として平成29年度から本格稼働し、市内および周辺地域の親子、夫婦、個人がスタッフの指導のもと、20種類におよぶ野菜の栽培に取組んでいる。また、四季を通じて様々な農業体験や食育イベントが用意され、延べ200人を超える市民の参加がある。

 この取組みを通じて、市民が地域の農と食を学び、地域の農と食を担っていく人材が輩出されることを期待するものである。

2-1 農と連携した食の拠点整備:「みんパタカフェ」
 市内のメイン通りに整備された「みんパタカフェ」は、以前生花店であった空き店舗を改修した飲食・加工施設である。収容人員は20名ほど、厨房には様々な加工作業に対応可能な加工室が併設され、「kitchen.liaison(キッチン.リエゾン)」の愛称で平成30年10月に開業した。

 ここで提供される料理には、地元産の食材を使用することを基本的なコンセプトとし、前述の「農縁」で収穫された野菜類を中心に、可能な限り市内の農家や業者から食材調達することを目標としている。平成30年度は「農縁」で試験的に栽培された野菜類が無償で提供されており、特に農縁産の「ローゼル」は料理や菓子、飲料に広く使用され好評を得た。

今後は両者が連携して計画的な需給関係を築いていくこととしている。

2-2 食の担い手づくり:「食セミナー」
 「みんパタカフェ」の開業を担ったのは、市の商工会議所の仲介で参画した市内在住の飲食業コンサルタントを中心に、地元での飲食店開業を目指していたフレンチシェフの夫妻、そして今回実施された「食セミナー」の受講者から有志の数名という、いずれも地元の人材である。

 「食セミナー」は、地域の食を学び食の担い手を育成することを目的に、一般市民を対象として実施された。平成29年度の「みんパタ食セミナー」では、「みんパタカフェ」への参画を想定した「食のおしごとコース」「レシピづくりコース」を設定し、地元で飲食店を開業する、飲食業に従事する、といった目標に向けて、専門家の講義・実習を約60名が受講した。平成30年度には、このメンバーを中心に「みんパタカフェ」への参加者を募り、パート・アルバイト従業員として6名ほどの就業が実現している。

 また、平成30年度のセミナー「『みんパタ』食・農講座」は、開業した「みんパタカフェ」を会場として開催された。今後は、地域の食の拠点となるこの施設を十分活用し、更なる人材育成が図られていくことが期待されている。

3 おわりに
 以上のように、このプロジェクトでは地域の「食」と「農」を連携させる中で、地域と市民のつながり、人と人とのつながりがうまれ、市内に住みながら働くことのできる魅力的な地域の実現を目指している。同時に、地産地消の推進と都市農地の有効活用にも大きく貢献する取組みである。今後は、これまでの活動を土台に協議会組織を新たなメンバーが継承し、収益事業化も含めた新しい活動の展開が期待されているところである。

コンセプトの検討
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協議会の構成と事業内容
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「農縁」イメージ

「命をいただく」
(ジビエの解体ワークショップ)

「みんパタカフェ」外観

「みんパタカフェ」で開催された食セミナー

都市農業の機能発揮

評価ポイント!

地産地消…大消費地(名古屋市)近郊の発達した物流環境の中では、遠方からの様々な農産物が店頭に並び、地場産の安心安全な産物の選択が容易にできない状況にあった。その中で、まちなかの「農縁」で採れた野菜を、まちなかの「みんパタカフェ」で食すという仕組みは、市民の目に見えるより分かりやすい地産地消の実現であり、また同じ「みんパタ」という旗印のもとに市民が参加する様々な取組みが行われてきたことで、地域をあげて食と農の連携に取組むという姿勢が明確に示されている。

団体概要

団体名伝統の食と農のまちづくり推進協議会(平成30年度まで)
活動地域愛知県津島市
問い合わせ都市農地活用支援センター(協議会事務局)