令和3年2月開設
令和3年12月最終更新
都市農地や都市内の様々な農的空間を利用して、都市農業や農を楽しむ市民的活動を進めるためには、法制度、税制、支援事業等についての的確な情報が不可欠です。
本欄には、当ページを通じて皆さんから寄せられた質問や当センターが開催した講演会、ゼミナールなどでの質問への答えを掲載しています。
目次
定期講演会2021参加者からの問合せ (令和3年11月)
- Q 生産緑地地区でソーラーシェアリングなどの再生可能エネルギー設備を設置したいと考えていますが、許可されるのでしょうか。
- A (国土交通省に確認したところ次のような取扱いになっているとのことです。)
生産緑地地区内では、当該生産緑地において農林漁業を営むために必要となる施設等の設置又は管理に係る行為で良好な生活環境の確保を図る上で支障がないと認めるものについて、市町村長の許可を受けて設置することが可能となっています(生産緑地法第8条)。
ソーラーシェアリングなどの再生可能エネルギー設備についても、当該生産緑地にお いて農林漁業を営むために必要となる施設等であり、良好な生活環境の確保を図る上で支障がないと認めるものであれば、市町村長の許可を受けて設置することができます。
- Q 農地法第43条で規定する農作物栽培高度化施設の設置されている土地も生産緑地地区の指定対象になると考えていますが、そうした事例はあるのでしょうか。
- A (国土交通省に確認したところ、次のような事例があるとのことです。)
生産緑地地区の対象となる生産緑地法第2条第1号の「農地等」とは、現に農業の用に供されている農地等をいい、農地法第43条第1項の規定による届出に係る同条第2項に規定する農作物栽培高度化施設の用地を含みます。なお、農作物栽培高度化施設は、令和2年12月末時点で、生産緑地地区内で4件の設置事例があります。
(令和3年11月)
生産緑地指定後の農地としての管理についての自治体担当者からの問合せ(令和3年7月)
- Q 生産緑地指定後、適切に管理されていない農地があった場合の対応はどのようなものが考えられるか
- A 生産緑地法では、生産緑地の使用収益権者に農地として管理する義務が課されているが(法第7条)、法による罰則や違反状況を確認するための立入検査が定められているのは生産緑地地区での開発行為や建築行為の制限違反に関してのみである。
従って、農地としての管理については、農地制度に拠ることとなる。
生産緑地も農地法の農地であるので、農地法に基づく措置として法で定められた毎年一回の農業委員会による利用状況調査(法第30条)、利用意向調査(法第32条)、利用関係の調整(法第34条)の手続きを活用することが考えられる。
- Q 生産緑地でありながら適切に管理されていない場合に、固定資産税の宅地並み課税をしている事例はあるのか
- A まず、適切な管理となるよう指導することが前提となるが、宅地並み課税をしている例がないわけではない。
固定資産税の課税に関し、国の定めた固定資産税評価基準(地方税法388条)では、現況に基づく地目認定を行い、地目毎の評価方法を用いることとされている。(生産緑地の場合、地目は一般農地となる)
宅地並み課税をしているケースでの不適切な管理の状況は定かではないが、税務担当部署が現況確認を行い、それに基づき宅地として課税していることが考えられる。
- Q 生産緑地の買取申出がなされる前に、都市計画決定権者が生産緑地地区を廃止(都市計画法第21条)した事例はあるのか
- A 良好な環境確保や公共施設等の適地であることに着目して行為制限がかけられているので、管理が不十分であることを理由に解除することは考えられない。
これまで適切に管理されていないことを理由にした生産緑地地区の廃止(規制解除)の事例はない。
(令和3年7月)
農地保全型地区計画についての自治体担当者からの問い合わせ(令和3年4月)
- Q 本制度はどのような地域を想定して制定されたのでしょうか。23区での指定も想定されているのでしょうか。
- A 制度創設に当たっての国土交通省資料によれば、まとまった農地が住宅と混在し、居住環境を形成している地域において、農業と調和した良好な居住環境を確保する必要がある地域で、用途地域としては第一種中高層住居専用地域、第一種住居地域、準工業地域が挙げられています。(東京都23区内も対象に想定されていると思われます。)
これらは、営農施設の建設が可能な用途地域ですが、これ以外の営農施設の建設ができない用途地域(例えば第一種低層住居専用地域)で、建築基準法に基づき、条例制定に当たって大臣承認の手続きをとり営農施設の建築制限を緩和することもあり得ると考えます。
- Q 都市計画法第十二条第七項第四号に規定される内容(対象とする農地と、その農地に課す「形質の変更」「物件の堆積」に関する制限)を定めたものを、「農地保全型の地区計画」と考えるという認識で合っているでしょうか。
- A 法令、運用指針で「農地保全型地区計画」という表現はありませんが、都市計画法第十二条の五第7項第四号により、地区整備計画で「現に存する農地で農業の利便の増進と調和した良好な居住環境を確保するため必要なものにおける土地の形質の変更その他の行為の制限に関する事項」を定めたものを通称「農地保全型地区計画」と呼んでいます。
なお、厳密には、土地の形質の変更、建築物の建築その他工作物の建設又は土石その他政令で定める物件(廃棄物、再生資源)は、条例で許可を受けなければならないと定めることのできる行為であり、地区整備計画で定めることのできる行為と同一ではありません。
- Q 第五十八条の三において、「許可を受けなければならないこととすることができる」と規定されていますが、許可制をとらなくても上記に記載する内容が定められていれば「農地保全型」との認識で合っているでしょうか。
- A 先に申しましたように、元々「農地保全型地区計画」という法律用語はありません。
あるのは、「地区計画農地保全条例」と「地区計画農地保全条例区域内農地」(運用指針)という表現だけです。
法律的には、一定の行為を許可対象(禁止)することのできる地区計画農地保全条例の有無が重要と思われます。
- Q 土地の形質の変更について、第五十二条第二項第一号で定める面積基準以外で制限をすることは可能でしょうか。(300㎡以上で不許可とする基準の考え方はありますでしょうか。)また、この条例をもって300㎡以上の農地の転用を認めないという強制力は想定されているのでしょうか。
- A 法第五十八条の三第四項では、「地区計画農地保全条例には、第五十二条第一項ただし書、第二項及び第三項の規定の例により、当該条例に定める制限の適用除外、許可基準その他必要な事項を定めなければならない。」と定められています。
「例による」ということを当事者の自治体がどう判断されるかということだろうと思います。
農地の転用(地目)については、市街化区域内農地は農地法上、届け出となり、それ以上の転用制限はありませんが、都市計画法に基づく「地区計画農地保全条例」により一定の行為を許可対象(禁止)することができることになっています。
- Q 建築物の建築について、第五十二条第二項第二号で定める面積基準以外で、用途制限なども想定されているのでしょうか。その場合の許可基準の考え方はありますでしょうか。
- A 都市計画法には、お尋ねの事についての規定はありませんが、定められた地区整備計画の内容によっては、法第五十八条の四 「地区計画等の区域内における建築物の建築その他の行為に関する制限については、前二条に定めるもののほか、別に法律で定める。」とされており、建築基準法に基づくルールに沿った規制強化、緩和が可能と考えられます。
- Q 農地保全の担保として、生産緑地のように時限を設けて農転を認めないということは可能でしょうか。
- A 先に申しましたように、農地転用(地目)については市街化区域内農地は農地法上、届け出となり、それ以上の転用制限はありません。
生産緑地の場合は、生産緑地法に基づく開発・建築行為を許可制(禁止)しています。
生産緑地法に基づく規制か都市計画法に基づく規制かの形式の違いだけで、農地保全上の実効性に差はないと思われます。
ただ、生産緑地の場合、その制度目的に照らし、30年(特定生産緑地は10年)の時限となっていますが、農地保全型地区計画や田園住居地域の場合は時限という仕組みはありません。
- Q 全国で導入をしている、または導入を検討している自治体はありますか。
- A 国土交通省に確認したところ、現時点(令和3年4月8日現在)では、公表できる事例はないとのことです。
(令和3年4月)
定期講演会2020での主な質疑(令和2年11月)
- Q 生産緑地法上、農地レストラン等が建てられることになっているが、農地法上では転用に当たらないのか? 転用であれば農地でなくなってしまうために、生産緑地法と矛盾が生じてしまうのではないか。
- A 農地法上の農地転用に該当するため、農地法第4条又は第5条による届出の手続きをとる必要があるが、生産緑地法第8条に基づく許可対象の施設については、農地転用がなされても引き続き生産緑地である。
- Q 生産緑地をJAが都市農地貸借法で農地を貸借し、、直売所や農家レストランを運営することは可能か。
- A 都市農地貸借法は、耕作を目的とした農地の貸借を行うものであり、直売所や農家レストランを設置する場合には、活用できません。
- Q 地区計画農地保全条例制度で適用される地区で都市農地貸借円滑化法の適用対象となる可能性はあるか。
- A 都市農地貸借円滑化法の中で、都市農地貸借円滑化措置の適用対象は生産緑地地区内の農地に限定されているが今後必要があれば検討することになるものと考える。
- Q 地区計画農地保全条例制度について、地区計画区域内の農地については、生産緑地でなくとも生産緑地と同等の相続税等の税制特例が受けられるという認識でよいか。
- A 相続税、贈与税、不動産取得税については、地区計画農地保全条例制度による特例の対象は、三大都市圏特定市の市街化区域内農地であり、また、地区計画区域内の農地すべてが対象になるわけではなく、地区整備計画において土地の形質変更等の行為の制限に関する事項が定められた地区計画区域内の農地で、地区計画農地保全条例による制限を受ける農地が対象となる。対象となる農地に対する税制特例は、生産緑地と同様である。
一方、三大都市圏特定市以外では、地区計画農地保全条例による制限を受ける区域かどうかにかかわらず、これまでと同様に、農業相続人の死亡又は20年営農を条件とする納税猶予が適用される。
固定資産税に関しては、地区計画農地保全条例による規制が土地の価格に影響を与 える場合には、地区計画を定める市町村において、その影響を適切に固定資産税評価額に反映させることとなる。その際、固定資産評価基準に定める田園住居地域内市街化区域農地の評 価方法を参考とすることも考えられる。
- Q 田園住居地域について、まだ指定事例がないとのことだが、今後、制度が活用される地域のイメージはどのようなものか。
- A 地域によっても異なるが、例えば次のような地域が考えられる。
- 市街化区域になっているがあまり宅地になっておらず、宅地化する見込みがあまりないエリア
- 土地利用の改変スピードを遅らせ、ゆったりとした住環境を提供していくエリア
- Q 田園住居地域と比較して、地区計画農地保全条例制度の特徴は何か。
- A 田園住居地域が地域内すべての農地を保全対象とするのに対し、地区計画農地保全条例制度では、地区整備計画において、土地の形質変更等の行為の制限の対象となる農地を定めることができる。
また、同時に、地区整備計画において、地区施設として道路や公園等を位置付けたり、建築物の高さ等についてルールを定めたりすることができ、地区内の総合的なまちづくり計画を策定することができる。
- Q 農業振興地域以外の地域、市街化調整区域において、営農規模拡大のため集約化したいが、どのような事業手法が適用できるか。
- A 農業経営基盤強化促進法に基づく農用地利用集積計画(利用権設定促進事業)や農地中間管理事業推進法に基づく農地中間管理機構の農用地利用配分計画を活用することが考えられる。
- Q 生産緑地の所有者と都市で新規就農を希望する人のマッチングを支援するような取り組みの事例があれば教えて欲しい。
- A 東京都農業会議の取組がある。これまで、東京都内での新規就農については、農業経営基盤強化促進法に基づき東京都農業会議が担い手育成総合支援協議会を通じて、積極的に就農相談や就農までのサポートといった支援を行ってきた。
平成30年に都市農地貸借円滑化法が制定され、市街化区域においても生産緑地を借り入れる法制度上の環境が整ったことを受けて、この協議会の中に新たに新規就農希望者経営計画支援会議を設置し、市街化区域も含め、新規就農希望者が経営計画を作成する際、助言および支援を行っている。
農業会議は関係機関などと顕密な連携の下で、生産緑地での就農に向けて、農地の貸し手を探し、貸付者とその家族などを含めた話し合いの場を設けており、こうした支援によって、日野市や小平市において、生産緑地を借りて新規就農した事例が出てきている。
- Q 今ある農地を維持する以外に、新たに都市部に「都市農地」を作る(逆開発というべきか)ことは、日本でも現実的になってきているのか。
- A 数は少ないが、宅地を買って土を入れて農地にする事例も出てきていると承知している。
また、東京都では、新たに農地を造成する費用等に対する補助を行う事業があると聞いている。
(令和2年11月)
※このQ&Aは当センターの責任で取りまとめ、紹介しています。
※本ページの内容はそれぞれ、その時点の法令や事例等の把握状況等を参考に行っています。その為、現時点において内容が正確でない場合がありますのでご留意ください。