都市農地とまちづくり
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農住組合制度・実績

Q&A


Q1 農住組合事業とはどんな事業?
A

 農住組合事業は、農地所有者の土地利用意向を踏まえつつ、農住組合という組織を通じ、市街化区域内農地を活用して計画的に良好な住宅・宅地を供給していくためのまちづくり事業です。農住組合は、市街化区域内農地の所有者3人以上が集まって、自らの農地を活用し、将来の利用計画の立案から区画整理などの宅地造成事業、住宅の建設とその賃貸や分譲、管理などを行なったり、生活設計にあわせ当面の営農環境の整備を行なったりする、いわば農地の利活用のための共同会社のようなものです。
農地の有効利用という面からは、個人で行なうには多くの困難が伴うこれらの事業を、協同して取組むことで行ないやすくなるとともに、行政・JAによるノウハウの提供や財政的支援などさまざまな支援を受けることができ、また農地を活用したまちづくりという面からは、計画的な土地利用と一体的な面整備、住宅建設・管理により、安全で住み良い優良な住宅・宅地が、農地所有者自身の土地利用意向に沿って、自らの手で供給される、というメリットがあります。

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Q2 農住組合事業のメリット、デメリットは・・・
A

メリット

0.5ha以上の地区で農地所有者が3人いれば、土地基盤整備事業を伴う良好なまちづくりに取組むことができます
農地所有者各人の意向を尊重したまちづくりが進められます
各種の補助金・融資制度及び組合の運営管理・技術指導など、行政、JAから全面的バックアップを受けることができます
営農地を計画的に残すことができ、土地改良事業など営農環境の整備もできます
賃貸住宅建設の際に、有利な補助金・公的融資制度を活用できます
住宅のほか、店舗・駐車場・テニスコートなどの施設や、補助金活用によって市民農園・朝市広場などの設置も可能です
地区内に生産緑地や過去に区画整理を行なった農地があっても面整備事業が施行できるとともに、宅地化農地と生産緑地の集約・整序もできます
一団の土地としてまとまっている組合の地区から少し離れた飛び農地についても、組合の地区に含めて宅地化することができますし、継続農地とすることもできますし、継続農地とすることもできます。

デメリット

一般に、幹線道路を含むような大規模地区の開発には適していません
税法上は普通法人であり、土地区画整理組合のような公共法人としての優遇措置は受けられません
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Q4 土地区画整理事業との違いは・・・
A

 農地所有者が協同して計画的なまちづくりを行なう制度としては、組合施行による土地区画整理事業が広く行なわれています。土地区画整理事業と農住組合制度の最も大きな違いは、土地区画整理事業が、道路や公園などの公共施設整備と宅地造成(土地の区画形質の変更)のみを行なうのに対し、農住組合は、これらの面整備だけでなく、その後の住宅の建設・賃貸・分譲など具体的な土地活用事業まで、同一の組織で一貫して行なえる点にあります。
また事業の当初段階から、造成や換地の計画だけでなく、個々の土地の具体的利用方法まで考えて計画的に事業を行なうため、住宅建設などがスムーズに進むとともに、整然としたまちなみづくりが早期に実現されます。このように農住組合は、組合員の資産管理をも視野に入れた制度である点から議決は全員合意を原則組合員の加入・脱退は原則として自由税法上は普通法人として扱う(土地区画整理組合は公共法人)、といった特徴があります。

「農住組合」と「土地区画整理組合」との違い

区分 農住組合 土地区画
整理組合
1.対象区域 3大都市圏の特定市など住宅需要の著しい一定の市区町村 全国
2.組合員とその員数 土地所有者3人以上。ただし、農地所有者3人以上を含む 土地所有者7人以上
3.地区面積 農地面積が概ね1/2以上で、農地面積0.5ha以上
4.議決 原則として組合員の全員合意(土地区画整理組合から受託する場合は3分の2) 組合員・土地面積の各3分の2以上
5.組合員の加入・脱退 土地区画整理事業期間中は認めないが、その他の期間は自由 認めない
6.事業の範囲 ア 土地区画整理事業
イ 住宅・利便施設の整備
ウ 宅地・建物の賃貸・分譲・管理
エ 土地の交換分合
オ 土地改良事業
カ 農業共同利用施設の設置・管理
キ レクリエーション施設の設置・管理
ク 農地利用規約の設定etc.
土地区画整理事業のみ
7.JAとの関係 設立にあたり事業基本方針をJAに送付して意見を求めることや、組合の事業に対してJAに助言・援助の申請が可能 特になし
8.市街化区域内農業の公認 地区全面積から公共用地を除いた1/2の面積まで営農地を公認し、土地改良事業や共同利用施設の設置・管理が可能
農地利用規約の締結も可能
原則としてなし
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Q5 農住組合にはどんな支援措置がある?
A

 啓発・普及・勉強会活動→設立準備→土地基盤整備→住宅建設・市民農園・コミュニティ施設整備、といった各事業段階に応じて、行政やJAグループ、(財)都市農地活用支援センターによりさまざまな支援措置が用意されています。その内容を大別すると・・・

組合設立まで(土地利用構想の策定など)
農住まちづくり支援制度(国土交通省事業)
組合設立後
特定土地区画整理事業(国土交通省補助事業)
住宅宅地関連公共施設等総合整備事業(国土交通省)
特定優良賃貸住宅供給促進事業(国土交通省補助事業)
高齢者向け優良賃貸住宅制度(国土交通省補助事業)
住宅金融公庫融資
農住利子補給制度(国土交通省)
特定賃貸住宅建設融資利子補給補助制度(国土交通省)
その他、研修会、組合の運営管理に関する助言・指導などをはじめ、農住組合事業全般に対するJAグループの支援
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Q6 農住組合制度の啓発・普及を進めるには・・・
A

 残念ながら農地所有者が自発的にまちづくりを考え、自主的に農住組合などに取組むという事例は、ほとんどありません。とはいえただ単に「みんなで協力をしてまちづくりを・・・」と呼びかけても、すぐに賛同など得られるはずもありません。

 そこで農住組合制度の啓発・普及にあたっては、あくまで農地所有者側の視点に立ちつつ、まず市街化区域内農地の置かれている状況をしっかりと理解してもらい、そのうえで長期的にどのような土地活用が最も有効なのか、さらには協同で事業を行なうメリットなどといった、流れに沿った説明が必要とされます。つまり「自分たちが守り、生活してきたこの土地を、今後どのような地域にしていきたいのか」という身近な問題意識の掘り起こしこそが、地域として協同でまちづくりを行なっていく気運を醸成する第一歩。そのためには農地所有者に対し、日頃から会議や広報資料を通じて、農地を取巻く環境や今後の動向などについてきめ細かな説明や意見交換を行なうとともに、地方自治体・JAともに明確な相談窓口を設置し、農地所有者の声を積極的に聞いていくことが重要です。

 こうした活動を通じて、農地所有者に問題意識やまちづくりへの意欲が徐々に見えはじめれば、第1ステップは突破。さらにアンケートによる意向調査や、勉強会を実施して、組合発足に向けて直面する具体的な問題解決に向けての話合いまでこぎつければ、地域整備への気運は一気に高められるでしょう。また地方自治体・JAからみて、事業の緊急性が高いと思われる地区を選定し、優先順位を考慮のうえ、集中的に地権者への指導・掘り起こしを行なうことも大切です。

なおこうした啓発・普及活動には、農住組合制度の説明パンフレットや事例紹介ビデオとともに、都市農地活用アドバイザー制度を積極的に活用するなど、専門家のアドバイスを受けるとよいでしょう。
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Q7 農住組合事業を推進する地方自治体・JAの体制は・・・
A

 JAは、農家にとって最も信頼のおける相談相手として、農地所有者の土地利用意向の把握合意形成に力を発揮するとともに、地方自治体と組合との仲立ちとして農家の行なう良好なまちづくりの手助けを行なう役割が期待されます。このためには、市街地整備や住宅の建設・管理など、資産管理全般に関するノウハウの蓄積専門スタッフの育成を行なうとともに、普段から地方自治体と密接な連携が取れるような体制を作っておくことが必要です。

 地方自治体は、協同でまちづくりを行なおうとする農地所有者に対し、財政的支援技術的支援によりバックアップすることが求められます。特に、農住組合の行なう事業が市街地整備事業、住宅建設・管理、農業経営と多岐にわたることから、各事業の担当部局の連携体制を整備するとともに、農地所有者やJAが相談する担当窓口をはっきりさせることが重要です。

地方自治体の窓口課としては、多くの場合、都市住宅部局または農政部局が担当していますが、本事業の推進によるまちづくりを目的とする担当室を新設した自治体もあります。
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